【5分で読める】エンジニアのための 管理会計入門 第3回 限界利益と意思決定
【5分で読める】エンジニアのための 管理会計入門は、全7回で構成されています。
エンジニアなどの技術系の専門職から、プロジェクトマネージャーやCTO・CIO・CDOなどのビジネスサイドにステップアップするとき、多くの畑違いの新たな学びが必要となります。
特に、財務会計のスキルは、共通言語として必須になります。
社外向けの「財務会計」と異なり、社内の意志決定に活用される「管理会計」の全体像を、図表を用いてわかりやすく概説します。
社内研修やOJT等で、十分な学習機会を得ることができなかった境遇にある場合には、是非お役立てください。
●「5分で読める」ような工夫に努めております
●「図表」を使い、わかりやすい説明をこころがけています
●文献や論文の「参照箇所」を明示し、品質の担保に努めています
●お時間のあるときに、「参照箇所」を読んで理解を深めることができます
第3回 限界利益と意思決定 ✅今回
第4回 限界利益率と損益分岐点分析
第5回 安全余裕率
第6回 変動費と固定費の分解
第7回 まとめ 管理会計の全体像
世の中には多くの考え方があります。
わたしたちの考えが、独善的な思い上がりに陥らないよう、一定の社会的な同意を与えてくれ、帰納的に援護してくれた言葉や内容を明示します。
「出所」とともに「参照箇所一覧」に整理いたしました。
限界利益と意思決定
第3回は、「限界利益と意思決定」です。
最初に、「現在地:全体と部分」を、図表でわかりやすくご案内します。
下の図をご覧ください。
今回は、限界利益と意思決定についてご案内します。
↓ クリックして拡大
それでは、「限界利益と意思決定」の本題にはいります。
結論は、以下のように示すことができます。
●「売上高」から「変動費」を差し引いた値を、「限界利益」と呼びます
●「原価割れ」でも、「限界利益」がプラスであれば、「固定費」の回収に貢献します
上記の「限界利益と意思決定」の定義について、「参照」した箇所は、以下の参照箇所一覧をご覧ください。
「限界利益」という言葉は、聞きなれない用語かもしれません。
「限界」と聞くと、「ギリギリ」「極限」といった意味にとらえてしまいがちです。
「管理会計」で登場する「限界利益」の「限界」は、「1単位増えるごとに」といった意味で使われます。
したがって、「限界利益」は、「1単位増えるごとに手に入る利益」という意味になります。
この「限界」という意味は、ミクロ経済学の消費者理論で使われる「限界効用」に由来しています。
「限界利益」は、「売上高」から「変動費」を差し引いた値になります。
これまで、「変動費」と「固定費」を分け、「売上高」から「変動費」を差し引いて、「限界利益」を求めてきました。
つまり、売上が1単位増えるごとに、手に入る利益という意味になります。
この、「限界利益」が、「意思決定」に大きな影響を及ぼすことになります。
図表503の事例を見ながら考えてみましょう。
ある製品1個当たりの原価は1万円で、通常は1万3千円で販売しており、3千円の利益を得ていました。
ある日、顧客から、1個8千円で追加で発注したいとの打診がありました。
原価が、1万円なので、2千円の赤字となってしまいます。
さて、断るべきでしょうか?
受注しても、受注しなくても、労務費と間接費は、「固定費」として一定の費用がかかります。
受注しない場合は、「売上」も「変動費」である材料費も、ゼロです。
受注する場合は、「売上」は8千円、「変動費」である材料費は3千円になります。
受注しない場合と、受注する場合、を比較すると、受注する場合のほうが、5千円のプラスになります。
この5千円が、「売上」ー「変動費」=「限界利益」の5千円になります。
受注しなければ、「限界利益」の5千円は、手に入りません。
つまり、「限界利益」の5千円は、「固定費」である労務費と間接費の回収に貢献していることになります。
この事例からわかるように、経営判断として、原価割れでも、「限界利益」がプラスであれば、受注するという短期的な意思決定を導くことができます。
一般的な損益計算書で考えていると、「売上」ー「売上原価」=「売上総利益(粗利益)」がマイナスなので、受注しないという判断になってしまいます。
このことから、「変動費」と「固定費」を分け、「限界利益」を活用する「変動損益計算書」の重要性を理解することができると思います。
次回は、「限界利益」から、「損益分岐点売上高」を求める方法について、図表を交えてわかりやすく概説します。
今回は、これで終わりになります。
お読みくださりありがとうございました。
参照箇所一覧は、お時間のあるときにご参照ください。
●外部環境の大きな変化を整理したPEST分析は、ここから確認できます
●変わりゆく社会の価値観は、ここから確認できます
●ステークホルダー資本主義への転換に向けた「人・社会・経済の良循環モデル」は、ここから確認できます
●主要参考文献は、ここから確認できます
●わたしたちの活動の全体像は、ここから確認できます
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参照箇所 一覧
「ミクロ経済学 (1) 世界のエリートが学んだミクロ経済学決定版」 ピンダイク&ルビンフェルド
■参照した主な内容
・限界効用
・無差別曲線
・代替材と補完材
・消費者理論
参照 : 「ミクロ経済学 (1) 世界のエリートが学んだミクロ経済学決定版」 ピンダイク&ルビンフェルド
「管理会計の基本」 千賀秀信 日本実業出版社
■参照した主な内容
・限界利益
・変動損益計算書
・差額原価収益分析
参照 : 「管理会計の基本」 千賀秀信 日本実業出版社
「スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記」 滝澤ななみ
■参照した主な内容
・変動費と固定費
・損益分岐点分析(CVP分析)
参照 : 「スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記」 滝澤ななみ