【5分で読める】エンジニアのための KPI入門 第9回 完 KPIの注意点

【5分で読める】エンジニアのための KPI入門は、全9回で構成されています。

エンジニアなどの技術系の専門職から、プロジェクトマネージャーやCTO・CIO・CDOなどのビジネスサイドにステップアップするとき、多くの畑違いの新たな学びが必要となります。

特に、財務会計のスキルは、共通言語として必須になります。

経営目標の達成度合いを計測する「重要業績評価指標:KPI」について、図表を用いてわかりやすく概説します。

社内研修やOJT等で、十分な学習機会を得ることができなかった境遇にある場合には、是非お役立てください。

この記事の特徴

 ●「5分で読める」ような工夫に努めております

 ●「図表」を使い、わかりやすい説明をこころがけています

 ●文献や論文の「参照箇所」を明示し、品質の担保に努めています

 ●お時間のあるときに、「参照箇所」を読んで理解を深めることができます

【5分で読める】エンジニアのためのKPI入門|バックナンバー

世の中には多くの考え方があります。

わたしたちの考えが、独善的な思い上がりに陥らないよう、一定の社会的な同意を与えてくれ、帰納的に援護してくれた言葉や内容を明示します。

「出所」とともに「参照箇所一覧」に整理いたしました。


KPIを設定する際の注意点

第9回は、最終回「KPIを設定する際の注意点」です。

最初に、「現在地:全体と部分」を、図表でわかりやすくご案内します。

下の図をご覧ください。

今回は、KPIを設定する際の注意点についてご案内します。

↓ クリックして拡大

KPIを設定する際の注意点の概念を可視化した図表
図表709_KPIを設定する際の注意点

それでは、「KPIを設定する際の注意点」の本題にはいります。

結論は、以下のように示すことができます。

 ●「KPI」は、目標に対する「結果」を表す指標です

 ●「KPI」は、「結果」を導く「活動」を管理するための指標です

 

 ●「KPI」は、組織の「目的」「ビジョン」に適合する指標の設定が必要になります

 ●「KPI」は、「プラスの側面」と「マイナスの側面」を十分に検討する必要があります

上記の「KPIを設定する際の注意点」の定義について、「参照」した箇所は、以下の参照箇所一覧をご覧ください。

「KPI」は、あくまでも、「目標」に対する「結果」を表す指標です。

「KPI」は、「結果」を導く「活動」を管理するための指標です。

「KPI」自体を管理するのではなく、「KPI」を達成するための「活動」に焦点をあてることが重要です。

「KPI」は、組織の「目的」や「ビジョン」に適合する指標の設定が必要になります。

例えば、喫茶店で顧客にゆっくり過ごしてもらうことを、お店のコンセプトとしているのに、KPIに「回転率」を設定すれば、顧客はあまりゆっくりできない雰囲気のお店になりかねません。

他の例としては、成熟期を迎えた組織が、「新規事業」の探索を必要としている中で、評価指標に「成功率」を設定すれば、従業員は、チャレンジをせずに、無難でありきたりな新規とは言い難い取り組みしかしないでしょう。

一方、経営陣を含むマネジメントに対しても、外部環境が大きく変化する中で、「ESG」「国際標準ISO30414」などへの取り組みが、社会的KPIとして設定されはじめています。

1970年代以降、50年以上に渡り、環境破壊や変動費化による貧困や人権侵害などの外部不経済の大量排出をいとわない、「利益追求」を最大目的とした企業活動を推進してきた人々に対し、真逆のESGへの取り組みが評価基準になるわけですから、アンラーニングと越境学習が必須になると考えられます。

ご興味があれば、「【5分で読める】ステークホルダー資本主義 への大転換」をご参照ください。

このように、KPIを設定するときには、「プラスの側面」と「マイナスの側面」について、「想像力」や「洞察力」を活かして、試行錯誤の中から最適なKPIを見つけ出していく必要があります。

今回は、最終回です。

最後に、第1回から第9回の、各回の結論をまとめます。

お時間のあるときに、ご覧ください。

最後まで、お読みくださりありがとうございました。

第1回 KPIの全体像

 ●「KPI」は、「重要業績指標」のことです

 ●「重要業績指標」は、経営目標の達成度合いを計測するための指標です

 ●「KPI」は、あくまでも「結果」を表す指標として用いられます

 ●「KPI」は、3つの層「経営」「業務管理」「活動」レベルに大別できます

 ●「経営に関するKPI」は、一般的に共通しています

 ●「業務管理・活動に関するKPI」は、業種業態や事業ライフサイクル、競争地位別によって様々です

 ●「業務管理・活動に関するKPI」は、試行錯誤による仮説検証的なアプローチによって求められます

第2回 収益性指標

 ●「収益性指標」は、「利益の構造」を表す指標です

 ●「収益性指標」は、「損益計算書PL」から導出されます

 ●「利益の構造」は、「5つの利益率」で表されます

 ●「5つの利益率」は、「売上高総利益率」「売上高営業利益率」「売上高経常利益率」「売上高税引前当期純利益率」「売上高当期純利益率」です

 ●「収益性指標」は、すべての「ステークホルダー」に関連する指標になります

第3回 安全性指標

 ●「安全性指標」は、「経営の安定性」を表す指標です

 ●「安全性指標」は、「貸借対照表BS」から導出されます

 ●「安全性指標」は、「短期安全性」「長期安全性」「資本構成の安全性」の3つに大別できます

 

 ●「短期安全性」と「長期安全性」は、「貸借対照表BS」の「借方(左)と貸方(右)」を比較します

 ●「短期安全性」は、「流動比率」と「当座比率」で表されます

 ●「長期安全性」は、「固定比率」で表されます

 

 ●「資本構成の安全性」は、「貸借対照表BS」の「貸方(右)」の中身を比較します

 ●「資本構成の安全性」は、「負債比率」もしくは「自己資本比率」で表されます

第4回 効率性指標

 ●「効率性指標」は、「資金運用の効率性」を表す指標です

 ●「効率性指標」は、「損益計算書PL」と「貸借対照表BS」の両方の数値から導出されます

 ●「効率性指標」は、「回転率」と「回転期間」に大別できます

 

 ●「回転率」は、「売上債権回転率」と「棚卸資産回転率」で表されます

 ●「回転率」は、「分子」に「損益計算書PL」の「売上高」を配置します

 

 ●「回転期間」は、「売上債権回転期間」「棚卸資産回転期間」で表されます

 ●「回転期間」は、「分母」に「損益計算書PL」の「売上高÷365日」「売上高(原価)÷365」を配置します

 

 ●「回転率」が高く、「回転期間」が短ければ、「資金」を「効率的」に活用できていることになります

 ●「回転期間」は、資金繰りの指標「キャッシュコンバージョンサイクル」の基本情報になります

第5回 成長性指標

 ●「成長性指標」は、「企業の成長性」を表す指標です

 ●「成長性指標」には、多くの指標が存在します

 

 ●「成長性指標」は、「単年」の比較と「複数年」の比較に大別できます

 ●「単年」の比較の一例には、「単利計算」で求める「売上高成長率」があります

 ●「複数年」の比較の一例には、「複利計算」で求める「売上高年平均成長率」があります

 ●「成長性指標」は、主に「損益計算書PL」から導出されます

第6回 生産性指標

 ●「生産性指標」は、「組織の生産性」を表す指標です

 ●「生産性指標」は、一般的に「労働生産性」が「基本式」になります

 

 ●「労働生産性」は、「分子」に「付加価値」、「分母」に「従業員数」を配置します

 ●「付加価値」は、一般的に「損益計算書PL」から、「日銀方式」を用いて算出されます

 

 ●「労働生産性」は、4つの要素「売上高」「人件費」「有形固定資産」「総資産」で「分解」することができます

 ●「売上高」「人件費」は「損益計算書PL」から、「有形固定資産」「総資産」は「貸借対照表BS」を参照します

 ●「分解式」により、「組織の生産性」を「多面的」に分析することができます

第7回 限界利益率とスループット

 ●「限界利益」は、「売上高」から「変動費」を減算して求めます

 ●「限界利益」は、「管理会計入門 第3回 限界利益と意思決定」で概説しています

 

 ●「スループット」は、「生産量」に「スピード」の概念を取り入れたものです

 ●「限界利益率」が高い製品でも、生産や販売に「スピード」が伴わなければ「スループット」は低迷します

 

 ●「スループット」を高めるには、「ボトルネック」の解消に向けた経営資源の投入を要します

 ●「ボトルネック」を解消し、「スループット」を高め、組織の「全体最適」を実現します

第8回 ROEとROA

 ●「ROEとROA」は、「経営の総合力」を表す指標です

 

 ●「ROE」は、「株主資本利益率」と呼ばれています

 ●「ROE」の「基本式」は、「当期純利益」を「純資産(株主資本)」で除算します

 ●「ROE」の「基本式」は、「売上高」「総資産」で分解できます

 ●「ROE」の「分解式」は、「売上高当期純利益率」x「総資本回転率」x「財務レバレッジ」で表されます

 ●「ROE」の「分解式」は、「収益性指標」x「効率性指標」x「安全性指標」を用いて「経営の総合力」を表しています

 

 ●「ROA」は、「総資産利益率」と呼ばれています

 ●「ROA」の「基本式」は、「経常利益」を「総資産」で除算します

 ●「ROA」の「基本式」は、「売上高」で分解できます

 ●「ROA」の「分解式」は、「売上高経常利益率」x「総資本回転率」で表されます

 ●「ROE」の「分解式」は、「収益性指標」x「効率性指標」を用いて「経営の総合力」を表しています

第9回 KPIを設定する際の注意点

 ●「KPI」は、目標に対する「結果」を表す指標です

 ●「KPI」は、「結果」を導く「活動」を管理するための指標です

 

 ●「KPI」は、組織の「目的」「ビジョン」に適合する指標の設定が必要になります

 ●「KPI」は、「プラスの側面」と「マイナスの側面」を十分に検討する必要があります


参照箇所一覧は、お時間のあるときにご参照ください。

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参照箇所 一覧

「バリュエーションの教科書」 森生明 グロービス経営大学院教授

■参照した主な内容
・財務諸表
・デュポン式
・ROE、PER、PBR
・DCF法、EVA、FCF、NPV、IRR
・WACC、β値、CAPM
・継続価値、ゼロ成長モデル、永続成長モデル
・EBITDA倍率
・コングロマリットディスカウント
・M&A、垂直統合、水平統合
・現代ポートフォリオ理論、ブラックショールズモデル
・オプション、コール、プット
・リアルオプション
参照 : 「バリュエーションの教科書」 森生明 グロービス経営大学院教授 

「KPI大全」 嶋田毅 グロービス

■参照した主な内容
・バランススコアカード
・KPI マーケティング・セールス、オペレーション・イノベーション、組織、会計・ファイナンス
参照 : 「KPI大全」 嶋田毅 グロービス 

「ファイナンシャル・マネジメント」 ロバート・C・ヒギンズ グロービス経営大学院

■参照した主な内容
・財務諸表
・資金調達
・DCF法
・ROE、ROA、ROIC、EVA
・CAPM、WACC、NPV、IRR、FCF、ゼロ成長モデル、永続成長モデル、タックスシールド
参照 : 「ファイナンシャル・マネジメント」 ロバート・C・ヒギンズ グロービス経営大学院 

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■参照した主な内容
・現場に求められる戦略 「競合に勝てる理屈と手順」
・KFI(KGI)、KRI(KSF)、KAI
・トップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチ
・筋のいいストーリーを創ること
・創造力、洞察力(インサイト)
・阻害要因
・推論的仮説 ロジカルシンキング 演繹法、帰納法
・仮説に対し、エビデンスや確証を求める企業 戦略、革新、明日もない
・KPI設定ステップ
参照 : 「KPIマネジメント」 楠本和矢 博報堂コンサルティング 

「管理会計の基本」 千賀秀信 日本実業出版社

■参照した主な内容
・ROE、ROA、ROIC
・CAPM、WACC、NPV、IRR、FCF
参照 : 「管理会計の基本」 千賀秀信 日本実業出版社